「あぁ、春」相米慎二



題字が出るまでの、なんと素敵な始まり方だろう。雰囲気は思い出ぽろぽろのあのゆったりとしたピアノの戰慄の始まりに近くて、ほのぼのする。


トリックスターのことを考えながら見ていたからか、この映画でのトリックスターの存在が立場を変えて多くいることに気づく。亡くなったはずの父親がふいに現れる、精神的に病む笑い泣く妻、ホームレスと飲み遊ぶ父、その父が絡まれてかばう息子。ひよこ、倒産する会社ですら、環境が生んだトリックスターかもしれん。

   

リアルな会話がところどころにあるような気がして、そのリアルさがとりわけニワトリの泣き声であったり、富士順子の実際の父はほとんど家に帰ってこない火宅の人であったり。1960年生まれ同士のリアルな38歳、佐藤浩一と村田雄浩。

  

伊丹十三も大林宣彦も、同じカラーを感じる時があるのは、この当時の特長なのか松竹なのか、それとも?というのは気になるところ。これから気にしてみなくては。

  

ストーリーとしては、よくあるなんてことないようなことなんだけど、それぞれの仕草なのかなー?なにかが狂っていて、コミカルチックで、でもかなり抑えてると思った。

  

終始、家の中での話で、いろいろあってもその中で解決…してなくともそういうもんだってので、進んでいる。特に何かとてつもない予想外な展開とかがあるわけでもないのに、なぜか目が離せない。佐藤浩一の渋さなのか、斉藤由貴のおかしさなのか、富司純子の色気なのか、山崎努の姿なのか。なにで均衡が保たれているのか、絶妙に気になり、いつ壊れても、誰かが死んでも、一文無しになっても、おかしくない状況で、常にリーチで、上がれるのを、見ている私たちが待ち侘びてる感じなんでしょうかね。それは、基本的には崩壊の方で。対となるタイトルの「春」から、それは国士無双級の役満である高揚を隠せません。

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