「美術館を手玉にとった男」サム・カルマン、 ジェニファー・グラウスマン
























最初見る前に、贋作を作って美術館の作品と入れかえて何も気づかれない。
そんな、なにかスパイとかミステリアスな内容かと思ったのですが、
見終わる頃には”手玉にとった”というタイトルにイラッときた。

これは ”リアルすぎる贋作というアートを作っている”と、主張すれば認められる個性が、
何か障害とか病気というところから、
個性ではなくただの図画工作作業としてランディス自身がくくっていて、
そしてそれを、よく出来てるものならばそれは偽造の行為だ。
という風に落とし入れたい、マイノリティを批判するような感じがして、
ダンサーインザダークを改めて見たときに感じたイライラさと、
ちょっと似た感じがあった。

なにかアートの狭さを感じさせられるのと、
美術館が、お金と名誉の塊にしか見えない、
そんな、おそらくものすごく意図的に作られた映画だなと。
この映画で語られてる批判自体は、アート全体からすれば少数派なんじゃないかと思えた。
アートだけじゃない部分、病気なんだから仕方がない、
ニセモノなんだから。騙そうとしてるわけじゃないんだから。
そういう普段、綺麗に飾られて評価されてるアートの裏側に隠れてる見えない悪さ、
それがあるからこそ良さがあるみたいなもんが、
良いものとしても、悪いものとして、
どっちつかずなバランスが絶妙な映画だなーとも思いました。

「オリジナルの作品なんてこの世にない。かならず誰かから影響を受けている。」
みたいなことを冒頭でランディスがいう。
その言葉が、彼の作品なんだと思うんだけど、
なにか障害者の作業のような面が出てくるところが、 
ここでまた、アートが引き離されていく。
そこにも、障害者はお金とか名誉とかアートとは無縁のような、
へんなフィルターがかかっていて、イライラさせる。
イライラするのは、自分にやっぱりちょっとでも偏見があるからなんだろう。

この映画を、おいそれと、そのままに「贋作は良くないよ。やめなよ、つかまるよ?」
と、言えてしまう人は、一度自分を疑ってみるのもいい気もしました。
それは、被害にあった美術館ですら、それは別に悪いことではないんじゃないか?
と、思ってることを、少なくとも行間から感じられるからです。

とてもいい映画なんだと思います。

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